荒汐部屋 目次

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その10.剛士の意気込み

三段目西20枚目――ここまで勝率8割6分。快進撃が止まらない。

剛士 「最高位ですけど,周り見たら,普通に幕下の人とか重い人とかいっぱいで,ちょっと怯んでしまいそうですけど,そこは気を強くもって,幕下昇進荒汐部屋最短記録を狙うくらいで行きたいと思います。兄(大波)が今場所幕下に昇進したので,自分も食らいついていきたいです。

剛士 剛士 赤井さん(福轟力)と兄と寺井さん(荒篤山)とで出稽古に行ってたんですけど,人数が多いのと,自分はまだ三段目なのでなかなか買ってもらえないんですよね(解説:三番稽古は,勝った力士が次の稽古相手を指名する。指名してもらう=買ってもらうためには,自分と稽古するとより良い稽古になるよ,というアピールが必要。そのアピールには,稽古土俵上だけではなく,普段からの,あいつは最近ナカナカやるらしい,というイメージも大切。普段の稽古場での様子や本場所での相撲っぷりなど,つね日ごろから皆ライバルたちの動向には眼を光らせているので,そんなイメージはだいたい共有されていく)。

剛士 三段目の上位以上になると,今までとは明らかに「圧」が違います。連続的な変化っていうより,一段ポンとレベルが違うっていう違い方です。みんな,三段目上位~幕下下位がひとつの大きな壁になりますけど,このレベルの違いがその壁なのかな。一言でいうとやっぱりそれは「圧」の違いなんです。速さとか技とかの違いじゃないから,見ていてもよくわからないでんすけど,稽古するとホント実感するんですよ。今はがむしゃらに行くしかないので,とにかくやっている,という感じです。

剛士 自分ら兄弟3人とも相撲やってるんですけど,弟がなんだか勝ちまくってるみたいで(インターハイ県予選無差別&中量級ともに優勝。さらに,東北高等学校相撲選手権大会中量級,優勝。参考:学法福島相撲部)。兄として,先輩として,たまったもんじゃありませんよ。去年まで自分が高校で稽古つけてたのが,いまや東北大会で優勝って。8月の全日本ジュニアの結果次第では世界大会代表ですよ。身体も大きくなってるらしいし。正直,会いたくないですよ(苦笑)。こっちは体重減って困ってるって言うのに。

剛士 体重減るとはっきり相撲が軽くなってしまうんですよね。最近,寺井さんに立ち会いで負けてしまう。どうしても押し込まれてしまいます。だけど,これが本場所行くと,さらに体重が落ちるんです。というのも,本場所では付け人させてもらうんですけど,これがまた体重を減らさせるんですよ。付け人がしんどいとか大変とか,そういうことは別にないんですけど,これはやった人しかわからないと思うんですけど,あの支度部屋の雰囲気が・・・。自分らと同じ支度部屋のはずなのに,そこにいるだけで汗がでてくるような。ピリッピリに張り詰めた空気っていうか。まず関取ひとりひとりが放つオーラっていうか凄みが半端じゃない。いろんな壁を乗り越えてきた人たちっていう雰囲気というか,もう,自分らと同じ「人間」だとは思えません。ケタが違う存在っていうんですか。そのかもし出す「感じ」がとんでもないんです。とにかく圧倒されます。それにやけに大きいし。もう憧れとかそういう次元を超越してます,存在自体が。そんな関取に実際に身近に付け人としてついたら・・・もう。やらせてもらう前は,気疲れとかそういう感じかと思ってたんですけど,全然違いました。慣れられるもんじゃなさそうです。」

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