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【連載】平成25年九月場所を振り返って

蒼国来(十両東筆頭:4勝11敗)

すみませんでした。

来場所がんばります。

蒼国来

荒汐部屋より

と,ことば少なな蒼国来に代わって,荒汐部屋より蒼国来の現在をご報告申し上げます。

まず,荒汐のコメントにもありましたように,場所前,荒汐と蒼国来は,かなりつっこんだ意見交換をしました。荒汐が,名古屋から先場所前までの蒼国来の稽古・身体を見るに見かねて,呼びかけたものです。

七月場所,蒼国来は無事本場所に復帰しました。これは何より,それまでの2年の間,雨の日も風の日も街頭で復帰を願う署名を集めていただいた方々をはじめ,2万3千もの署名となったとおり,本当に多くの方々が,蒼国来を支えて下さった結果です。そしてそんな皆様の恩に,再び本場所で相撲をお見せすることで報いたい,蒼国来はその一心で土俵復帰までたどりつくことができたのでした。

しかし,復帰した七月場所の蒼国来は,身体に未だ張りもなく,2年という時間をまざまざと見せつけられました。そして先の九月場所,自分充分の形に再三なりながらも,逆に易々と軽々と,寄られ投げられ,負けに負けました。この目を覆いたくなるような「軽さ」は,ちょうど堂々たる体格で入門した新弟子が,初期の稽古を通じて無駄な肉を落とすように,2年の間に蒼国来にまとわりついた余分な贅肉がそぎ落とされた結果ではあります――そして蒼国来の場合,贅肉と一緒に筋肉まで落とされていました――。ともかく,こうしてそぎ落としつつある今,蒼国来は,再び研ぎ澄まされた相撲を闘うだけの,強靭な身体を獲得せねばなりません。

以前の蒼国来の身体は,入門以来7年間,毎日毎日,立てなくなるまでの過酷な稽古によってついに獲得したものでした。今,再び蒼国来はそういう稽古によって,再び強い身体を獲得せねばなりません。

あの2年は,年齢を重ねた2年でもあります。日一日と激しいトレーニングが可能な時間は減っています。もう蒼国来に猶予はありません。恩を返したいなら,今,またあの壮絶な稽古を行うしかないのです。できないなら,衰えるのをただ待つだけなのです――皆様が待ちわびた蒼国来はそんなでは決してないはずです。蒼国来が現状をキープするだけでは,荒汐が予見し先場所具現してしまったとおり,とてもじゃないけれど勝っていけないのが関取衆の土俵です。

荒汐が蒼国来に伝えたのはそういうことでした。単なる流行語としてではなく,本当に「今」しかないのです。今,死に物狂いで稽古するか,そうでなければ,辞めるか,だと。

もちろん蒼国来にも事情・考えはあるでしょう。特に,相撲ができなくなったら意味がない,そんな気持ちは強いと思います。2年のブランクを経たこの身体で,かつてのような稽古をしたら怪我をする,壊してしまう,そんな恐怖との戦いがあるはずです。

しかし,過酷にも時間は刻々と流れ,稽古できる強さを期待できる時は,どんどん短くなっていきます。身体の強さに応じて稽古の激しさも強くしていこう,などという調整を許す時間がありません。

ですから,今の蒼国来は,どこの誰より,厳しくかつ合理的効率的に稽古を行うよりほかありません。稽古場での四股・テッポウ・ぶつかりはもちろん,ジムでのトレーニングも併せ,1秒もムダにせず徹底的に鍛える時にいます。

「今するのか,辞めるのか」師匠が突き付けた選択に,蒼国来は4勝11敗という成績で答えました。つまり「今するしかない!」。苦い苦い実感をもって出た答えを実行すべく,今,巡業の合間も,連日,荒汐部屋で福轟力らと猛稽古をつんでいる蒼国来です。

蒼国来(撮影:荒汐部屋)

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