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2010-06-25更新

五十嵐 引退

2010年6月14日付をもって,荒汐部屋の力士,五十嵐聰(いがらし・さとる)は引退をいたしました。平成18年三月場所の入門以来,4年余りの修行を経て,以下のとおり引退へといたりましたので,ご報告申し上げます。

五十嵐は,ここ1年以上にわたって,腰の怪我もあり,思うような稽古ができないでおりましたが,そんな中,本人は「このままでいいのか」という疑問と対峙する毎日だったようです。一時は即引退も考えましたが,ちょうど荒汐部屋では折りしも蒼国来が関取となり,また自分もその初めての付け人に任ぜられた時期で,「この時期に辞めるわけにはいかない」と,日々工夫を重ねた稽古を続けておりました。甲斐あって,あと1勝で三段目というところまで力をつけ,周囲にも「闘志を内に秘めてはいるが,いよいよその気持ちが前に出てきたな」と期待させていた最近でした。

しかし,先場所の直前に,突如,五十嵐から師匠に,「今場所をもって辞めさせて欲しい」との申し出がありました。

師弟関係というものは,弟子は師匠に一生を預け,また師匠は弟子の一生を預かる,そんな覚悟と気概をもって臨むものかと思います。荒汐部屋ではまず5年の区切りを修行に想定していますのも,そこまで来れば相撲を通じて一生の糧になる何かを身につけてくれるだろうと考えるからです。

実際のところ,「もう辞めようと思う」というようなことは,相撲部屋の日常茶飯事と言って良いくらい頻繁に生じていることで(「道」の修行には,続けられるか否かの,この自分の中でのせめぎ合いは,避けて通れないものだと思います),その都度,兄弟弟子や,師匠・おかみ,あるいは友達や家族とで,それでいいのか,ここまでの修行を無にしないか,ここで踏ん張ってみよう,と励ましあって,ひとつひとつ自分の限界を乗り越えて,なんとか続けてやっていっております。

ですから,荒汐も五十嵐に突如「やめます」といわれて「はいどうぞ」とは,とても言うことはできません。どうしても辞めると言うなら,それは本人の決断ですから尊重するしかありませんが,辞めるにしても今後の人生設計にある程度でも見通しがなくば,とうてい見送ることなどできません。しかし本人は色々強い思いはあっても,具体的なプランが何も無いと言う。部屋としては,やりたいことについての免許の取得や勉強などを,部屋に在籍しながらサポートしてから引退してもらいたい。一方,本人は「そこまで迷惑はかけられない」と言う。何か互いの想いがかみ合わない歯がゆさが双方ありましたが,あとは五十嵐とご両親・ご家族で相談してもらうしかありませんでした。結果,実は消防士になるための勉強をする具体的なプランがあることを打ち明け,今後がハッキリしました。本人もご両親も納得できる計画であるなら,部屋としては見送るしかない,ということで,このたび引退となった次第です。

このように辞めて行く者のことをあれこれ公表するのは,本人の今後の重荷となるかもしれませんが,しかし,五十嵐ならきっとよく励みよく生きるに違いないと確信し,また,東京でも各地方でも,多くの方々にご愛顧いただいたプロの一人としてのけじめとして,まずは皆様に,(しばらくの間ではございますが)ここにご報告させていただきます。

五十嵐の挨拶です「4年と3ヶ月の入門期間でしたが,その間,多くの方々に本当にお世話になりました。今は感謝の思いでいっぱいです。本当にありがとうございました。」

荒汐は最後にこう伝えました。

「この世界は,辞めてから誰しもがずっとなつかしくなる世界です。気のあった者,憎かった者,喜びも苦しみも,すべてが懐かしい気持ちで思い出される,そういう世界です。しかし,辞めてからどう生きたかによっては,懐かしいここに,皆の前に,もう顔を出すこともできなくなる。「元気にやってるよ」と懐かしい想いをいっぱいにして再び部屋に顔を出せるまで,一所懸命やってきなさい。」

これまでの五十嵐のご声援,まことにありがとうございました。

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